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自筆証書遺言の保管制度が始まります!
2018年9月5日先日、相続制度を大きく見直す改正民法が参議院本会議で可決、成立しました。相続に関する民法の見直しは、じつに約40年ぶりのことです。それ以前に、相続税法が2015年に改正されていますから、この流れも必然ではありますね。
さて、今回の改正ポイントは、配偶者居住権の新設や遺産分割制度の見直しなど様々ありますが、そのうちの自筆証書遺言の保管制度の新設に注目していきたいと思います。
ところで、現在、遺言書を作成して亡くなられる人ってどれぐらいいらっしゃると思いますか?……実は、10%にも満たないと言われているんですね。ですから、我々司法書士事務所が扱う相続登記も、そのほとんどが遺産分割協議書を添付して申請しています。
なぜ、こんなにも遺言書の作成率が低いのか。理由はいくつかあると思いますが、例えば、自筆証書遺言であれば、要件が厳しいため、後日、無効になるおそれがある。その後の検認手続も煩わしい。紛失したり、保管場所が分からなくなったりする。推定相続人に破棄されたり隠匿されたりする可能性がある。などなど。
では、公正証書遺言であればいいか、というと、確かに自筆証書遺言のデメリットを消してくれたりしますが、手数料がかかりますし、証人になってくれる人(2人)も必要になります。
というわけで、なかなか遺言書を作成する気にもならないというわけなんですね。(もっとも、争いの種となるようなものをわざわざ作る必要もないし、遺言書なんか書かなくても、自分が死んだ後は家族みんな仲良くやっていってくれるだろう、というのが我々日本人の共同幻想なのかもしれません)
そこで、自筆証書遺言のデメリットを補うために創設されたのが、自筆証書遺言の保管制度なんです。保管先は、遺言者の住所地もしくは本籍地または遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する法務局になります。
また、保管の申請は、遺言者自身が遺言書を無封のまま、法務局に出頭して行わなければなりません。(代理人や使者による申請はできないものと思われます。また、遺言者が出頭する際には厳密な本人確認がおこなわれることになりそうです。もちろん、遺言書の撤回や返還請求なども遺言者自身が法務局に出頭して行わなければなりません。)法務局は、遺言が民法968条の方式を満たしているかどうかの外形的審査を行います。
この手続を経ると、その後の家庭裁判所への遺言検認手続が不要になります。つまり、新しく創設された自筆証書遺言の保管制度により、遺言書が紛失したり、保管場所が分からなくなったりすることもない。推定相続人に破棄されたり隠匿されたりする可能性もない。検認手続もいらない。と、自筆証書遺言のデメリットの多くが消えてなくなることになります。
ただ、相続人にしてみれば、遺言者が生前に遺言書を法務局に預けたよ、とでも言わない限り遺言書が預託されているのかどうかわかりませんよね。この場合、改正法施行時において公証役場のような遺言検索システムが確立されているかどうかは、現時点では不明です。
また、保管を請求する場合の手数料(預託料)についても、いくらかは掛かると思われます(無料というわけにはいきません)。とはいえ、公正証書遺言の手数料よりは抑えられるでしょう。
今回の改正は2020年7月までに順次施行される予定です。
ちなみに、自筆証書遺言の保管制度が始まるとはいえ、自筆証書遺言の要件は多少緩和されたものの、やはり専門家のアドバイスがないと、後日、せっかく書いた遺言が無効になる可能性もございます。
当事務所では、遺言書作成のアドバイスも承っておりますので、お困りのことがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。
また、当事務所は、相続税や事業承継税制に詳しい税理士と提携しておりますので、税の面でのご心配がある方も、お気軽にお尋ねください。